FM西東京11/25放送分
■タイトル 飾り言葉 ■
出演
みゆき:松井和美
けん:園尾直哉
たかひろ:遠藤勝年
恵子:カミヤ春佳(FM西東京)
■基本的に淡々と。ところどころ、強く。
けん 「突然だけど、好きなんだ」
みゆき 「驚いたけど、ありがとう」
けん 「一体全体、どうすればいい」
みゆき 「残念ながら、私には彼がいるわ」
けん 「案の上だけど、彼氏がいるのか(残念がる)」
みゆき 「当然のことながら、彼氏はいるわ」
けん 「もしかしたら、俺、ふられたの?」
みゆき 「悪いけれど、そういうことだと思う。アンド、私アナタのこと何にも知らない」
けん 「言われてみれば、そうかも知れない」
みゆき 「今気づいたけど、今日初めて会ったのよ、私たち」
けん 「今更きくのも何だけど、名前、教えて」
みゆき 「遅ればせながら、みゆきです。みかんの「み」に、夕日の「ゆ」に、
キテレツ大百科の「き」よ」
けん 「どれも黄色くて丸いね」
みゆき 「私、黄色くて丸いものが好きなの。あなたは?」
けん 「俺? 俺は青くて平べったいものが好きかな。空とか海とか、小田急の定期とか」
みゆき 「そうじゃなくて、名前は?」
けん 「おそらく、ケンだ」
みゆき 「たぶん、ケンなのね」
けん 「間違ってなければ、ケンだ」
みゆき 「不安なの?」
ケン 「俺はいつも不安と戦っているんだ」
みゆき 「まあ、可哀想」
ケン 「みゆきには分からないよ」
みゆき 「そんなことないわよ」
ケン 「不安とは想像力なんだ。今走ったら転ぶかも知れない。明日はご飯が黒いかもしれない。
後ろを向いたら百太郎がいるかも知れない、告白したらみゆきに振られるかも知れない」
みゆき 「確認するけど、私あなたを振ったわよね」
ケン 「果たして、俺は君に振られたのだろうか」
みゆき 「すこぶる振ったわ」
ケン 「あっけなく振られたね」
みゆき 「繰り返しになるけど、私あなたのこと何にも知らないわ」
ケン 「もしかして、自己PRしたほうがいいんだろうね」
みゆき 「ところが、そうでもないの。私には彼氏がいるから」
ケン 「しかしながら、俺にはその彼氏が見えない」
みゆき 「当然ながら、いつも一緒にいるわけではないわ」
ケン 「ダメかも知れないけれど、自己アピールしてみるよ。就職活動の時、練習したんだ」
みゆき 「社会人なの?」
ケン 「まごうことなき、社会人だよ」
みゆき 「悲しいわね」
ケン 「社会人は悲しいんだ。ネクタイは首輪だ。飼い主は課長だ。
会社は火の車で、タイヤはプリンストン債でできてる。
満員電車なんてついには文化になってしまった。文化はとても悲しい」
みゆき 「鯉のぼりも鏡餅も和式トイレも悲しいものね」
ケン 「君は完璧だよ」
みゆき 「そんな、恥ずかしいわ」
ケン 「俺の目に狂いはなかった。みゆき、結婚してくれ」
みゆき 「はい」
ケン 「ありがとう」
みゆき 「だめよ! 私には彼氏がいるもの」
ケン 「今いないじゃないか」
みゆき 「明確にはそうだけど」
ケン 「軽薄な発言は控えてくれ。私の妻ともあろうお前が」
みゆき 「ごめんなさい」
ケン 「式はどこで挙げようか」
みゆき 「シキは埼玉県よ」
ケン 「埼玉がいいの?」
みゆき 「そうでもないけど、志木は浦和の隣よ」
ケン 「そのシキか」
みゆき 「葬式の話なんてしないでよ」
ケン 「総指揮はスピルバーグだよ、決まってるんだ」
みゆき 「決まってるわね」
ケン 「俺が言いたいのは、式場のこと」
みゆき 「わたし色情女なんかじゃないわよ! 失礼ね」
ケン 「ごめん、そんなつもりじゃなかったんだ」
みゆき 「私こそごめんなさい、取り乱しちゃって」
ケン 「結婚式場について話し合おう」
みゆき 「誰と誰が結婚するの?」
ケン 「俺とみゆきだよ」
みゆき 「しないわよ。私彼氏いるもの」
ケン 「ああ! そうだった。でもここにはいないよ。俺は非常に量子力学的なんだ」
みゆき 「確率論的な見方に反抗していたアインシュタインは、
月が見えていないときには月は存在していないのか、って言ってたわよ」
けん 「詭弁だ! 詭弁を弄しているだけだ」
みゆき 「詭弁じゃないわよっ。智弁和歌山でもないわ」
ケン 「俺は知念リナが好きだ」
みゆき 「もう浮気するのね」
ケン 「すまん、出来心だったんだ」
みゆき 「だめよ、私許さないから」
ケン 「みゆき」
みゆき 「みゆきだなんて軽々しく呼ばないでっ」
ケン 「さゆり」
みゆき 「それならいいわ。わたしは今からさゆりなのね」
ケン 「俺はさゆりとはつき合えない。他に好きな人がいるんだ」
みゆき 「どういうこと? あんなに愛してるって言ってくれたじゃない!」
ケン 「さゆりだって浮気してるんだろ。彼氏が他にもいるって」
みゆき 「ふん、ばれたか。そうさ、あたしにゃあ男がいるさ、あんたなんかよりずっといい男がね」
ケン 「別れよう、さゆり」
みゆき 「別れましょう」
ケン 「その男のところへ行くがいい」
たかひろ 「こんばんは」
ケン 「誰だ、あんた」
たかひろ 「みゆきの彼氏です」
ケン 「あ、こんばんは」
たかひろ 「どうも、初めまして。ところでみゆき、このゴミのような男はだれだい」
ケン 「ゴミのようなとはなんだ、ゴミのようなとは。
せめてロミオのようなとか、ロココ調のとかにしてくれ」
みゆき 「このロココ調の男が、私のこと好きなんだって」
たかひろ 「それはご愁傷様だ。みゆきは俺と付き合ってるんでね」
みゆき 「残念ながら、それが事実なの」
ケン 「勝手ながら、そう思わないことにした」
みゆき 「指でも加えながら、私たちを見ていてね」
ケン 「横目で見ながら、年老いていくよ」
たかひろ 「君そんな、年をとるだなんて大げさだよ」
みゆき 「おじいちゃん」
ケン 「なんじゃ」
みゆき 「おじいちゃん、かわいい」
ケン 「おお、孫のみゆきじゃないか。元気じゃったか」
みゆき 「はい。おじいちゃんも元気?」
たかひろ 「君、名前は?」
みゆき 「たかひろ、私のおじいちゃんに向かって君って失礼じゃない?」
たかひろ 「私のって。このロココ調の男が?」
みゆき 「私、おじいちゃん好きよ」
たかひろ 「あ、おい。なんでそっち行くんだ。おい、腕なんか組むなよ、
あ、ほっぺにチューまで。このくそじじい!」
ケン 「じじいとはなんだ、じじいとは」
たかひろ 「あ、元にもどりやがった。まったく変なやつだ。みゆきと完全に波長が合ってやがる」
ケン 「俺達は愛し合っているんだ」
たかひろ 「何言ってるんだ。みゆきは俺の女だ」
みゆき 「私、この人に惹かれ始めているわ」
たかひろ 「はい?」
みゆき 「私、この人のことを好きになれそうなの」
たかひろ 「何も無理に好きにならなくても」
みゆき 「よく見るとあなた鼻の穴がでかいわね」
ケン 「よくこんな鼻の穴のでかいヤツと付き合ってたな」
たかひろ 「なんだと」
みゆき 「仕方がなかったのよ」
たかひろ 「おいおい」
みゆき 「これでやっと別れられるわ、さようなら」
たかひろ 「みゆきっ。おい、ちょっと待て、どこ行くんだ、おい、待て。待てよ」
みゆき 「痛いわよ、離して」
たかひろ 「すまん」
みゆき 「私、しつこい男嫌いよ」
たかひろ 「もうしないよ」
みゆき 「ダメよ、そんなこと言ってまた私を引き留めようとするんだわ。あなたいつもそうよ。
自分が不利になったら私を抱けばいいと思ってるんでしょう。
女はね、抱かれて流されてる振りをしているだけなのよ」
たかひろ 「そうなのか、そうだったのか。おい、本当にそうなのか」
ケン 「あんた人の話聞いてるのか。さゆりがそう言うんだからそれが真実なんだよ」
たかひろ 「さゆり? お前、いつからさゆりになったんだ」
みゆき 「名前なんて区別さえできればいいのよ。今女は私一人なんだから、
さゆりでも仁美でも恵子でも構わないはずよ」
恵子 「こんにちは」
たかひろ 「恵子」
恵子 「初めまして」
ケン 「はじめまして」
みゆき 「初めまして、私はみゆきよ」
恵子 「はい、知ってます。たかひろさんの恋人でしょう。
私、たかひろさんのこと好きだから、何でも知ってるの」
みゆき 「何でも?」
恵子 「そうよ。愛の力ね」
みゆき 「たかひろの身長は?」
恵子 「173センチ」
みゆき 「体重は?」
恵子 「65キロ」
みゆき 「あしは?」
恵子 「26.5センチ」
みゆき 「好きな食べ物は?」
恵子 「カレーとハンバーグ」
ケン 「なんて一般的なやつなんだ」
たかひろ 「悪かったな、平均的で」
恵子 「アナタはそれでいいの。出る杭は打たれてしまうわ」
みゆき 「ひ弱ね」
恵子 「か弱き乙女なのよ、私は」
たかひろ 「俺の話じゃなかったっけ?」
恵子 「あなたは黙ってて」
たかひろ 「はい」
恵子 「これは女の戦いなの」
みゆき 「そんな男、くれてやるわ。私にはこの人がいるから。ねえ」
ケン 「ああ」
恵子 「私、この人のことがずっとずっと好きだったの」
たかひろ 「恵子」
恵子 「でもあなたがいたから近寄れなかったのよ」
みゆき 「私はもういないわ」
恵子 「嬉しいわ。こんなに嬉しい出来事はそうないわ。これでこころおきなく死ねる」
たかひろ 「死なないでくれ」
恵子 「死なないわよ。ハッピーエンドだもの」
ケン 「ハッピーエンドだな」
みゆき 「おそらくハッピーエンドね」
恵子 「なかなかハッピーエンドでしょ」
ケン 「抽象的なハッピーエンドだ」
恵子 「概念的なのよ」
みゆき 「けれど流動的ね」
恵子 「さりとて幸せよ」
たかひろ 「いわゆる幸せだな」
恵子 「あ、慣れてきたわね」
たかひろ 「おそらく慣れてきた」
みゆき 「すべからくいい感じじゃない」
たかひろ 「かろうじて着いていってるんだ」
ケン 「取り立てて素晴らしいよ」
たかひろ 「いかんせん、初めてなもので」
一同 「(笑う)」
みゆき 「(間)まもなく、エンディングね」
終わり
(c)岡本貴也・タコあし電源
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