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■30日(夜)十日町保育園
小学校の隣がこの保育園。半ばあきらめ気分だったが、一応話をしにいく。
「向こうに話はした?」
とここ一帯の本部である小学校を指す。さっき行った所だ。
「何があるの?」
「服とか……カイロとか……」
力無く答える。しかし近藤は食い下がる。何か役に立ちたいという地元民ならではの強い信念があるのか。いずれにせよ、どの避難所を取ってみても足りない物は必ず存在するはずだ。
「僕ら2人が長岡で、この3人が神戸で」
その途端、反応が俄然よくなる。うーむ、このフレーズは免罪符のようだ。
「じゃあ今からみんなに声かけて、ここに集まってもらうから」
と明るく言われる。やった。いけるかも。
勢いづいた僕らはこう提案した。
「では、このロビーに服とか全部広げて、
皆さんに好きなのを選んでもらうってのはどうですか? フリマみたいに」
「あ、それいいね。そういうのが避難所生活の癒しになるから」
ナイス思いつき。
そんなボランティア活動見たことないし。
ただし、新潟ではフリマではなくバザーという。
さっそく車を入口に横付けし、残りの物資すべてをロビーに広げる。
わあっと人が集まってくる。とくに女性が多い。お祖母ちゃん、お姉さん、オバサン、子供たち。さながらバーゲンセールである。
子供たちの顔が笑顔になる。お姉さんも笑う。
「これ可愛い」
「サイズが小さい」
わいわいガヤガヤ。とても賑やかで華やかになるロビー。
「カイロちょうだい」
お祖母ちゃんも必死で手を伸ばす。
「長靴ある? 土で埋もれて取り出せないのよ」
自分たち用に買った物まで配ってしまった。
「女はこういうの好きだねえ」
とオジサン方も満足げ。
けれど、リーダー系のお姉さんは端っこの方で遠慮がち。
ただ見ているだけだったので、
「これ、どうですか」
とアニエス・べーのコートを渡す。
「え、いいの?」
と嬉しそうに受け取る。救援物資を提供してくれた方の中にはかなり高価なブランド品ばかりを持ってきてくれた方もいて、正直僕らも驚いた(新潟の小学生にはブランド名が通じなかったが(笑))。
これまで他の場所で誰も欲しがらなかった防寒着やシャツ類、カイロが短時間で一気にはけていく。しかも活気づいた空気の中で。あと、袋を欲しがる方も多かった。救援物資は単に与えられるだけではなく、与えられたものの中から選ぶ権利を残すべきだ。僕らはそう直感した。
【来てよかった】
この一言に尽きた。
組織だったボランティアももちろん重要だが、一人一人の顔を見てしか行えない活動というのも確かに存在する。我々はそう確信する。ボランティアにプロはいない。ただ、経験者が存在するだけなのだ。
ちなみに、洗濯もされてない汚い衣類や明らかにゴミのような物が混じっていたので、それらは隠した。
あと、下着や靴下が必要なようだった。また、雨合羽はズボン付きが喜ばれるようだ。
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